好きにさせてよ。

好きにさせてよ。

偏食な趣味を、つらつら綴る。字圧強め文字のブルドーザー。可愛い連中/モーニング娘。など

別に付録目当てに雑誌買ったって良いじゃん。ー馬鹿になんて出来ないカップリング編ー

おまけ。

 

隙がない。
好きしかない。

そんなカップリングたちについての愛。

 


ノンフィクション


ヴィレヴァン限定販売シングルとして発売された「スーパーサマーライン〜消えたはずのセレブのあいつ〜」カップリング。
会場で急に再販しているときがあるので、見つけたら買うべき。脊髄反射で買うべき。

友達3人と有名人だけフォローした裏アカのタイムラインみたいな、生々しさの濃度が異常に高い曲。
あ、もちろん彼氏と彼氏にやたら近くて気にくわない女のアカウントも見てるけどね。フォローはしないけど全部遡って見てるよ?みたいな裏アカウントね。
(皆さんはそんなことしたことあります?私は若かりし頃そんなことばかりしていました。

今は病状も落ち着いています。)

iTunesでも買えないので歌詞は引用いたしませんが、「死にたい」という言葉が出てくるアカシックの楽曲はとても希少です。


若さ漲ってる。


まだ理姫さん、奥脇達也氏、バンビ氏の3人での活動時期なので、演奏も血の気盛んな気配が漂います。


若さ漲ってる。

いわゆる世間のいうところの「メンヘラ」なのですが、理姫さんが書くと歌詞というより口語自由詩と分類したくなるようなフレーズが挟まるところが好き。

もう一度言います。
見つけたら買うべき。脊髄反射で買うべき。
財布の中身がどうとか脳で確認する前に買うべき。

 


福富朝陽


メジャーデビューシングル「愛×Happy×クレイジーカップリング。
路地裏の湿気、嫌になる程飲んですっきりしない朝帰りの時間を想起させるミディアムナンバー。
間違いなく曲の肝はバンビ氏のベース

「ママ、大人になれば
こんなもんだったの
わたしの夢って
余裕も無い 狭い街での日々と感情論だったの」

なんてこった。
落胆の仕方さえお洒落。

恋の最中にくだらない悩みを抱えること、「1円にすらなんない」ことに苛立ちを覚えること、飲み歩かなきゃやってられないような気持ちになること。


「大人」って案外呆気なく辿りついちゃうという事実が消化しきれない、これは間違いなく理姫さんの言葉でありながら私たち現代人みんなの歌です。

それでも、この歌は「朝陽」。


夜は明ける。
明けちゃったなら、どうにかなるわ。
そんな一歩が描かれていることに私は救いを感じます。

 

 


平成へゴー!

 

福富朝陽同様、メジャーデビューシングル「愛×Happy×クレイジーカップリング。


この曲には黒柳リヒ子がいます。
そして奥脇セクシーボイス達也がいます。
それだけで買うのは必至。


(話は逸れますがコジさんのコーラスは優しさと甘さ、達也さんのコーラスは色気と野生と良い感じで担当が分かれてると思ってる)

昭和末期の日本にタイムスリップできる遊び心。
70年代80年代に恋い焦がれた理姫さんと、「J-POP」のカッチョ良さを追い求めた奥脇氏の作品だからこそ、こんな達者なおふざけもできるのでしょう。

さあ、次は「令和へ参ります」のリリースお待ちしております。さよなら!

 

平成へゴー!

平成へゴー!

  • provided courtesy of iTunes

 

 


エンドオブザワールド

 


セカンドシングル「オレンジに塩コショウ」カップリング。
初期から温めた珠玉の名作。
その頃ライブハウスで生で聴きたかった…

岡崎京子さんの短編集に同名の短編集があります。
うまく言葉では言い表せませんが、岡崎京子さんの作品と理姫さんの歌詞は、終わりを見せない飲み込み方、パステルな色で描く虚無感みたいなところが何となく共鳴しているように感じます。

何でもない日常の中で思い出す、幸福の絶頂とそれを喪った現実。
プラスの世界もマイナスの世界も見たからこそ願う、私の幸せ。

ずっと続くような小気味よい曲調が、突然分断されたように終わるところもまた、無常さや時間の有限を物語っているように思えてなりません。

 

 

知らなかったなんて減らず口叩いても遅いんだから

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油断していました。まんまと。



昭和の芳醇さ、彩りをほんのり醸しながらも、90年代J-POP全盛期を彷彿とさせるような「メロディこそトドメ」といわんばかりのキャッチーな音楽。

平成という時代に、横浜という街に生まれ落ちた人生を丸ごと飲み込んだ世界観。
愛とは、生とは、女とは、答えのない問いに向き合い続ける、愛憎劇さながらの歌詞

前作「エロティシズム」は、アカシックの集大成かと思えるくらいに彼らの強さが丁寧に研磨されたアルバムでした。
この作品が世に出たことによって、「アカシックとは」という定義を述べることができるとさえ思っていた人もいるかもしれません。

そんな折、突如「4ヶ月連続配信シングル」の発売が公式からアナウンスされました。

私たちは、以降4回に渡って度肝を抜かれることになります。
前作までに築き上げた定義に則ることのない、新しいアカシックがそこにはいたのです。

ちなみに、更に会場限定ミニアルバムとして、配信シングル4曲に新曲2曲を加えた「POP OFF」をアカシックはリリースしました。
なので、度肝を抜かれた回数は正確には計6回に上ります。


脱皮し続ける、愛憎劇の一幕。
ファンさえも呆気なく裏切る現在進行形のアカシックを、あなたが目撃してください。

 

 

 



M1 「LSD



甘酸っぱい物寂しさ、幼心に連鎖させた終わりの気配、色とりどりの世界に混ぜて誤魔化した切ないやり切れなさ。
それがぎゅっと凝縮したM1 「LSD」。

リゼルグ酸ジエチルアミドの略称がLSDらしいですが、関係するのかしないのか。
幻覚症状を引き起こす、トリップできるお薬みたいですが、関係するのかしないのか。
闇の中だからこそ、考えるのが楽しい。

「明るいのに悲しい」という自分たちの常套手段に持ち込むのかと思いきや、いとも簡単に定跡を破壊してしまいます。
トリガーは間違いなく、随所で響き渡る絶叫。

私たちは、恣意的な足元の悪さによって不安を煽られるような気分に陥ります。


しかし、純情と狂気のハイブリッドはいつしか私たちに依存性をもたらしてしまうのです。

「小さな頃に願ってばかり
いたのに今も同じ」

あの叫び声は、可愛い世界に溶かしきれなかった大人の泣き声なのかもしれないと思いながら聴いてしまうのです。


アカシック「LSD」MV

 


アカシック「LSD」2018.12.20@渋谷ストリームホール

 

 

LSD

LSD

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M2 「Death is Not the End」


ただひたすら、部屋の中で絶望に打ちひしがれている「あたし」。
悶え、苦しみ、記憶に苛まれていく様が克明に描かれています。M2「Death is Not the End」。

「あたしに下した
別れも永遠か
愛は悪魔か」

好きの反対は嫌いではなく無関心だと、世間では言います。
つまり、嫌悪、憎しみという感情は、好意の対極にあるものではなく、好意と連続しているものだと考えられるのです。

愛していたから、憎い。
愛しているから、憎い。

抜け出せない愛と憎しみの連続性が、鎖のように連なっています。

理姫さんは、いつも死を肯定しません。
過去にも、どれだけ絶望の淵に立たされていても「幸せじゃないから死ねない」と歌詞に書きました。それほど、死を受け入れません。

死んで終わり、という解決法は決して取らない生き様の彼女が背負う絶望。
終身刑のごとく残り続ける痛み。
その絶望に付いた名が「Death is Not the End」なのです。

彼女は、歌詞の中でその名をこう翻訳します。

「死んでも許せないお話」と。

 

Death is Not the END

Death is Not the END

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M3 「禁煙成功」


生活臭というものを控えながらも、恋のリアルな光景を浮かび上がらせる。
そんな理姫さんの必殺技がM3「禁煙成功」で上手い具合に炸裂しています。

「偏っている」あなた、「時代遅れの私」
アンバランスな二人のやり取りがちぐはぐなものであることは、想像に容易いでしょう。


しかし、そのバランスの悪さが話の主題ではありません。

歳月をかけることできっと歩み寄れる日が来るのだから上手にバランスが取れるその日まで共にいよう、と願う恋心こそが核です。

「あたしのオススメなバンドが
有名なテレビにいつか出るんだから」

アカシック様、是非とも金曜の夜8時にテレビでお会いしましょう。

私はアカシックを時代遅れだなんて思いませんので。

時代が間に合っていないのです。

 

禁煙成功

禁煙成功

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M4 「エリザベスロマン」


女帝 of 「POP OFF」。
アカシックの楽曲では珍しい類の疾走感が、無情な日々を暴き出します。

「衝撃の発明
24時間落ちないマスカラ
落として寝る」

私たちが常習的にこんな矛盾を犯していたこと、誰が気づいていたっていうんでしょうか。
気づかれていないものに気づくこと、この歌詞こそ理姫さんの衝撃の発明です。

この世界は、危うくて理解不能
そんな事実をサラリと突きつけられます。

「悪意で溢れた
女は闊歩の仕方を知らない
弱さが喉を詰めていく
そんな日を助けていく」

世界の危機に気づいたうえで、正しく生きていく覚悟。
悪意によって自信を掠め取られた人、弱さに苦しむ人を救い出す決意。

こんな強さもサラリと出す理姫さん。

押し付けがましくない優しさが、矜持のある立ち姿のようで美しい。
絶望の果て、世界の虚しさを知っているからこそ打ち出せる、気品ある強さを感じられます。

なお、思いがけない間奏の仕掛けはとってもお茶目で「エリザベス」様というより「ベティ」ちゃん。

是非聴いてみて。

 

 

エリザベスロマン

エリザベスロマン

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M5 「かしこい食卓」


笑ってる人が本当は一番怖い。
そんな座った目の恐ろしさがごっそり歌詞に落とし込まれた曲、M5「かしこい食卓」。

唯一、配信もされていなければMVも公開されていない曲。
会場限定ミニアルバムの中に秘められた宝物。
ライブ行きましょう。

矢継ぎ早に注ぎ込まれる歌詞は、理性と狂気の境目に立たされている切迫した緊張を感じさせます。

渦巻いて排水溝に流れ落ちる水のような、淡々と連なる歌声。
仄かに漂う気味の悪さを演出する演奏。
バンドサウンドを主役に置かず、電子音に世界を敢えて侵略させる作戦。
未来しか感じない、アカシックの新しい音。

こんなの、初めて見るアカシックです。とんでもないです。
でも歌詞は引用してあげません。
会場に来た人の秘密だもの。
ライブ行きましょう。




M6 「地獄に手を振って」


アカシックが今まで大切に育ててきた愛の深さ、包容力を前面に押し出したM6 「地獄に手を振って」。

恋の歌は、聴いてほしい。
流行りの歌は、聴かないでほしい。

1番、2番で対となる思いは、誰にも邪魔されない愛の実態と共有を求める気持ちなのではないでしょうか。

「ふたりの世界はいつでも
優しい絵本の中で
地獄に手を振っているよう」

理想を閉じ込めた虚構のように、絶望から疎外された二人だけの空間。
愛を共有することで、その空間を創り出すことができるのではないか。

そんな切なる願いを込めた歌に、私は聴こえます。
と、言いたいところなのですが。


アカシック「地獄に手を振って」MV


毎度毎度MVを見て、私はとんでもない見当違いをしているのではと疑っています。

結末は敢えて事細かに明かさない。
ハッピーエンドなのかバッドエンドかもわからない、そんな映画のように煙に巻かれる曲。

MVを見て、あなたはこの曲に何をお思いでしょう。

間に合うよ、今なら。



私は前述いたしました。
このバンドが織りなす愛憎劇は現在進行形だと。

愛憎劇の続きは、ステージライトを浴びながら待っています。
共にライブに行きましょう。

 


アカシック会場限定ミニアルバム「POP OFF」Trailer

 
アカシック「憂い切る身」2018.12.20@渋谷ストリームホール


アカシック『8ミリフィルム』 from "日本凛々ツアー"@キネマ倶楽部

 

 

 

 

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あの夜酔い潰れて泣いた人が、全てを晒して歌う愛

 

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大人になったら欲望を捨てていくの?

 

大人になる、あるいは、大人になったというのはどんなときなんでしょうか。

 

 

投票行って外食したら?

僕の体が昔より大人になったことに気づいたら?

解らず震えている15の夜を「そんな時代もあったね」といつか笑える日が来たら?

 

いつまで子どもで、いつから大人なのか。

境目があるようでない、不思議なこと。

 

私たちはよくわからないまま、ビールを飲んで大人になっただの、お肌の曲がり角が来てしまっただの、大人になった気分になっています。

そして、「もう大人なんだから」とたくさんのことを諦めていきます。

 

音楽についての評価も、あるとき急に過渡期を迎えます。

丸くなった、落ち着いた、なんて言い方で、私たちは勝手にあれこれと人の音楽に年輪を数えだします。

確かに、たとえアーティストやバンドマンであっても、デビュー初期の鋭利な欲望をむき出しにしたまま何年も活動している人たちは少ないのかもしれません。

 

そんな風に思われそうなタイミングで、「エロティシズム」という、欲望をごっそり取り出したような単語をアルバム名に据えたアカシック

刺激的であり、挑戦的。

曲がポップで丸みを帯びた反面、欲望を描くエッジさが強大になった印象です。

 

積載荷重ぎりぎりに詰め込まれた数多の曲を紐解くことで、私たちは大人になっても心に住み着く欲望、すなわち愛の重さを思い知ることになります。

 

大人になったら禁欲的に生きなさいなんて、誰に言われたの?

 

そんな問いかけが聞こえるような、アカシックの最新アップデートを目撃すること必至です。

 

 

                                                                             

M1 「憂い切る身」

 

今までの活動全てを背負いこんでアカシックが闘いを挑んでいる。

それが私たちの心に克明に刻まれる。そんな曲、M1「憂い切る身」。

 

理姫さんの「愛」についての定義は、従来「あなたと私」の世界の中にあるものでした。

この眼差しの間には誰も不可侵であるという執念深さが滲む、そんな世界。

 

しかし、今回私たちは恐ろしい幕あけに気付かざるを得ません。

理姫さんの「愛」の定義は、世界、歌、脳内に描く理想、死ぬまでの人生すべての中に移動したのです。

 

「これが一途か 気が狂いそうだ」

 

そのすべてのものへの「愛」を抱きしめて、先行きの見えない大海のような人生を泳ぐ覚悟。

本当に向き合っているからこそ、「気が狂いそう」と吐露しているのではないでしょうか。

 

「赤い海」とは何か。

競争の激しい既存市場か、あるいは、欲望がひしめき合う現代社会か。抑えきれない恋心なのか、それとも、理姫さんの握りしめる「愛」のすべてなのか。

何通りも答えがあるような気がします。

 

このアルバムこそが、この曲こそがまさに、「鍵付きドル箱」

海底に沈むような絶望を濁さずに表現し尽くしてくれる理姫さんの言葉は、いつも私たちの心を守ってくれるのです。


アカシック「憂い切る身」2018.12.20@渋谷ストリームホール

 

憂い切る身

憂い切る身

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M2 「いちかばちかちゃん」

 

このM2「いちかばちかちゃん」を単に「メンヘラ」「ヤンデレ」と形容するのは損でしかありません。

 

確かに、「絶対約束判子ください」は結婚を暗喩していそうだし、「紅ひいて歌う世界」理姫さんがステージに立つ様を彷彿とさせます。理姫さんお得意の「ノンフィクション」作品です。

 

しかし、恐ろしいのは生々しさだけではありません。

日常のどこをトリミングすることで、狂った心を描写するのかという編集能力が卓越してます。

 

「高い苺冷蔵庫の中

風邪ひかないで あたためて食べてね」

 

私が鳥肌立ったのはここ。

 

高い食べ物、可愛い苺、食材を傷めないようにする冷蔵庫、体を労わる言葉と温かい食べ物。

分解すると、愛している人にしてあげたいこと、渡してあげたいもの、ごく自然なことばかりです。

 

それがどうだ。

全部を無理矢理直列回路で繋げたことにより、心遣いはただの暴挙に様変わりします。

愛はひたすら行為や物を足し算するだけでは報われない、という虚しさが痛いほど沁みます。

 

そりゃ、ここまで気が狂ってれば「同じシャンプー」(ということは女物のにおいがするシャンプー)使わせて他の女からマウント取りたいし、「威嚇ふぁぼ」(つまり他の女のSNSは隈なくチェックしている証拠)もかましてやりたいし。

 

統合し切れていないような歌詞に見えて実はとっても理論的に見えたりする、技巧派の歌詞です。

それを一発撮りでRECするという恐ろしいことをしでかすアカシック。演奏も勿論技巧派です。

 


アカシック『いちかばちかちゃん』 MUSIC VIDEO

 

いちかばちかちゃん

いちかばちかちゃん

  • provided courtesy of iTunes

 

M3 「邪魔」

 

こうきたか!と思わず叫んだM3「邪魔」。

今までありそうでなかった、シャレオツ闇ロック。ミディアムテンポなのに心臓が弾むように昂る、ライブでも殺傷力高い曲。

 

「風に舞い踊った

花びらは今日

アスファルトに降伏して ゴミになりました」

 

このフレーズの無駄のない美しさ、虚しさ、邪なものに屈服してしまう悔しさ。

急に幻想が荒っぽい現実に引き戻される落差まで、完璧な表現だと思います。

ラスサビ前の、前半部分が違う表現になったバージョンまで含めて計算高い

 

抽象的なようで、所々刺してくる場面ばかり。

 

「惨めが代わり番をしただけでしょ?」

「骨を

血を

飲んでも

あたしだけのものにできない」

 

一言も言い返せない、大ダメージの攻め。責め。なんと心地よいダーク。

 

 


アカシック「邪魔」2018.12.20@渋谷ストリームホール

 

邪魔

邪魔

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M4 「裸-nude-」

 

曇天からの晴天が一番澄み渡って見える、そんなポジションの曲です。M4「裸-nude-」。

 

「愛してるのに

嫌いになって

息止めて逃げるのお仕舞い」

 

「大人が裸になるの

どうして駄目なの」

 

足枷を外して、なにもかもを抱きしめたように歌う理姫さんから出てくる言葉は、上手く大人になれない私たちの核心を貫きます。

 

なんで大人って、いっぱい色んなことを経験して、色んな知識を得て、失敗も成功も重ねてきてるのに、下手に取り繕う性格をずっと治せないんでしょうか。

そんなことしていたって、救われる訳でもないのに。自分への嘘が止まらなくなるのに。

 

そういう私たちの下手くそな成長が見透かされそうで、聴き続けると胸が苦しい。でも聴いちゃう。

 

「ケバさは強さじゃないの護って」

 

よくぞ言ってくれました。

くだらない企みとか、偽った笑顔とか、要らないものは捨てられたら良いのに。そんな勇気を優しく与えてくれる曲です。

 

 

裸-nude-

裸-nude-

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M5 「私」

 

突如「コンサバティブ」な夜が回想されるような世界。

それでいて、「今」の理姫さんだからこそ歌えるような重み、M5「私」。

 

「好きになった男には女がいた」

 

話の筋書きだけ述べるなら、このワンフレーズで終わりです。

 

しかし、「失恋」がもたらすダメージとは、単に相手を手に入れられない悲しみだけではない。理姫さんはそこを実直に描き出しています。

 

自分そのものを否定されたような、やり切れなさ。

今までの人生がひっくり返ってしまうような、絶望、後悔、自己嫌悪、憎悪。

つまり、失恋はアイデンティティの崩壊の危機ですらあるのです。

 

この歌詞読んで、「あ、私がいる」って思わない女性はいないんじゃないでしょうか。


ねぇ本当に、もうちょっと、見て#2

 

私

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M6 「マイラグジュアリーナイト」

欲深く生きる心を否定せず、「生き様」と言い切る強さ。

這いつくばっている絶望を、貪欲な渇望へと生まれ変わらせようとする信念。

このアルバムの心臓部、M6「マイラグジュアリーナイト」ではそんな想いが詰まっています。

 

「欲望に従い

贅沢に悩み

あたしの生き様をさ 行け」

 

悩む、という言葉から消極的な印象を拭い去ることは容易ではありません。

苦しくて、光が見えなくて、不安になって、葛藤して。

私たちは、悩んでいるということは先に進めていない状態、足止めを食らっているようなものだと考えます。

 

しかし、「贅沢に」という言葉が、その悩んでいる様すら絶対的に肯定します。

整理整頓できていない脳内でも、絡まった配線コードのような感情の葛藤でも、その思い悩む夜も無駄じゃなくて、かき消さなくて良い自分なのだという肯定。

 

美しいメロディーの隙に垣間見える、狂暴なほどの強さ。

恋の痛みを酒で塗り替えてきたような初期の歌も併せて聴けば、この曲が単なる曲風の「変化」ではなく世界がひっくり返るような「進化」ということがまざまざと確認できます。

 


アカシック『マイラグジュアリーナイト』

 

マイラグジュアリーナイト

マイラグジュアリーナイト

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M7 「ブラック」

愛は呪いであって、執着であって、嫉妬であって、相互関係を求める虚しい行為であって、自己嫌悪との闘いである。

そういう粘着性のある恋を語るはずなのに、余りにもキラーチューン。

そのアンバランスさも愛おしい、M7「ブラック」。

 

「こんな敵だらけの世界から

狂いそうなベッドまで

パスポートひとつで飛ぶのよ

全部棄てな」

 

JPOPの教科書に載せるなら、このフレーズは「君とならどんなことも出来そうな気がする」的な部分だと思います。

しかし、理姫さんは「全部棄てな」と突きつけることで、相手の覚悟も引き換えに要求します。

 

依存し合いたい。一方通行な想いになど気づきたくない。

だから、つまんない話をするあなたも、あたしのこと知らないあなたも嫌い。

好きだけど嫌いではなく、好きだから嫌い。

 

「重い女」なんて不名誉な称号が世間にはありますが、誰もがこんな悲しい呪縛から解放されたいだけなんです。

「一生分の名前呼んで」なんて懇願するほどに。


ねぇ本当に、もうちょっと、見て#1

 

ブラック

ブラック

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M8 「LOVEYEN」

このブログを書いている2019年は早いもので令和の世になりましたが、M8LOVEYEN」では昭和から平成に変遷するときのような、ちょっと見栄っ張りな煌びやかさと茶目っ気が魅力です。

 

遊び倒しているような曲ほど、散らばる言葉遊びが相変わらず上品なのがアカシックらしさ。

「海外旅行して かぶれて

帰ってくる馬鹿みたいに」

なんていう毒の吐き方も、曲の雰囲気を壊さないのにリアル。

マウント女子のSNS見ている気分。

 

おふざけではぐらかされた「ご縁ちょうだい」が、令和にも通ずる現代の寂しさを暗示しているようです。

 

 

LOVE&YEN

LOVE&YEN

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M9 「オレンジに塩コショウ」

「うだるような」、という言葉をまるごと曲にしたようなM9「オレンジに塩コショウ」。

(一時は円盤化されないのではないかと不安でした)

 

「タイムライン更新しないで ずっと マジで」

 

SNSはどれだけ私たちの恋を邪魔してきたのでしょう。

知らなくて良いこと、無言のヒント、邪推。

そんなこと/なんでわざわざ/知らなきゃいけないの、の略でしょうか。SNS

 

話は変わりますが、「遊び足りない気分を茶髪にして」など、相変わらず理姫さんは夏の演出が得意。

スーパーサマーラインに続く、センチメンタルサマーです。

 


アカシック『オレンジに塩コショウ』

 

オレンジに塩コショウ

オレンジに塩コショウ

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M10 「日本の宝」

愛犬への私信、M10「日本の宝」。

と言い切ってしまいたいところですが、滲む愛の本質がちょっと深い

それが思いがけない聴きごたえを生み出します。

 

「シャバのチリも絵に変えてくれた」

 

飼い犬がもたらした功績をこのように表現していますが、対象に限らず愛の効用ってこのフレーズが言い得ているのではないかと思います。

 

愛がなければ、街を眺め直すことはなかったかもしれない。

廃れていくことに不安を抱かなかったかもしれない。

どんな場所にも彩りがあることを理解できなかったかもしれない。

 

欲望を根掘り葉掘り見つけ出してしまうこのアルバムだからこそ、この曲があって良いと私は勝手にしみじみ思います。

 

 

日本の宝

日本の宝

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M11 「愛×Happy×クレイジー

「愛」と「Happy」まではわかる。

その次に「クレイジー」がよく続いたものである。

M11「愛×Happy×クレイジー」は、アカシックのメジャー1stシングルであるというプロフィールを抜きにしても、背筋の通った覚悟がガツンと伝わります。

 

それでいて、M1「憂い切る身」、M6「マイラグジュアリーナイト」と異なるのは「絶望してたってつまんないじゃん」と言わんばかりの悟りみたいな部分。

 

改めて考えてみると、理姫さんの歌には「べき」「ねば」がない。

私はこうしたいんだ、という純粋なエゴイズム。これが全ての始まり。

周りにどう思われているとかいないとか、そんなことは蚊帳の外。

 

私も、愛するあなたも、幸せなら良い。例えそれが傍から見たら狂っちゃってても。

 

そんなふうに考えると「愛」と「Happy」の次は確かに「クレイジー」なんです。

 

「くだらないもの 大事に愛してる」

この言葉が凝縮したMVもぜひご覧あれ。


アカシック「愛×Happy×クレイジー」

 

 

愛×Happy×クレイジー

愛×Happy×クレイジー

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M12 「エンジェルシンク」

何回も聴いてるのに、いまだに泣かずに聴けないかもしれない。M12「エンジェルシンク」。

実は初期曲のようですが、時は満ちたと言わんばかりの登場。

 

「目が乾くほど暖めてきた部屋に帰るわ」

 

素直に泣くって言えないシリーズ…好き…

もう…わざとらしくドライアイにならないでよ…何時間前から暖房入れっぱなしにしてんだよ、電気代どうすんだよ来月後悔するぞ…(やかましい)

 

相手に施してきたこと、その思いが報われなかったこと、泣きたいこと、泣くって言いたくないこと、一文で氷解する数多の悲しさ。

 

未練とは、みっともない。

そんな先入観は崩壊します。またしてもたった一行で。

 

「思い出を嫌わないで」

 

今の私たちに、未来はない。

それでも、重ねた思い出に罪を着せないでほしい。

愛し合ったことは嘘じゃないから。

 

そんな余りある未練が皮肉にも美しすぎて、そう易々と瞼を開けたままにはできません。

 

 

エンジェルシンク

エンジェルシンク

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M13 「you&i」

「エロティシズム」裏リード曲、「youi」。

いつか、終わりは来てしまうこと、別れを避けられないこと、それをどことなく感じているからこそ、何もかもを守りたいと感じているような、そんな切ない優しさが響きます。

 

あなたが望むのならば何でもしてあげたい、そんな無償の愛が曲中で語られます。

しかし、その願望はどこか歪んでいます。

 

「このまま遠くまで 電車に揺られて

一緒に逃げても

but i will say good bye to you

 

逃避行は、いつか終焉を迎える。そして、その切り出しは私からしてしまう。

なぜ、さよならを回避できないのか。

 

「小さな呪縛が いつか手を滑り

苦しめないように」

 

醜い愛の性質が、この部分から覗き込んでいます。

どれほど尊く思っても、大切にしたいと願っても、何もかもをしてあげても、いつか私からあなたを「呪縛」してしまう。

 

独占欲、依存願望、エゴ。

そんな予感から、距離を置くことが最も幸せではないかと不安になる。

理姫さんの心は私には悲しいくらいにわかりませんが、何となくそんな場面を想像せずにはいられません。

 

そんな二人を暗喩するものは、大海原と月明かり。

月明かりの姿形は映っているのに、触れることは決して許されない隔たり。


アカシック『you&i』

 

you&i

you&i

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M14 「エロティシズム」

余韻の中に漂うバッドエンドの気配、M14「エロティシズム」。

アルバム名を冠した曲だけあって、欲望の果てが遂に露呈します。

 

比喩的表現が踊り、具体的な生活感をことごとく排除した世界観。

呟くように、消えそうな声で絞り出す言葉。

暗い洞窟の中を歩むように聞き進めると、突如恐ろしい問いかけが聞こえてきます。

 

「あなたを好きになって 本当に良かった

助けて もういいでしょ」

 

このちぐはぐ具合はどうしたって言うんでしょう。

どこが本当に良かったって言うんでしょう。

 

「地獄だろうと ついてきて」

 

ちぐはぐ部分とこのフレーズが示すもの。

それは、愛が底なし沼だということの証明ではないかと私は考えています。

 

終わらない、好きになっても好きになっても終わらない。

本当に本当に好きだけど、愛しているけど、まだ好きになる余地がある。

 

それに気づいてしまったとき、いくら相思相愛でも、この愛の苦しみは終わることがないのだということが同時に理解できてしまいます。

 

どこまでも、どこまでも、欲望はついてくる。それに、向き合い続ける。

それこそが、この歌の持つものであり、タイトルの意味なのかもしれません。

 

ずっと、この歌にカラスがどうして出てくるのか、分からなかったんです。

このアルバムについて何時間も何時間も考えて、候補を1つ。

 

「カラスが鳴くから帰ろう」、それはつまり家に引き返す合図。

「あの校庭の地下に カラスはいくつ寝てる」

 

カラスは鳴かない。だから、引き返せない。引き返さない。

埋めたのは、私。

だって、「愛に邪魔なものは消す」のだから。

 

 

 

エロティシズム

エロティシズム

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大人だからこそ、欲張っていい

 

私、ずっと勘違いしていました。

大人になったら、次第に愛を持たなくなるのだと思っていました。

 

かつて恋人であった配偶者を粗雑に扱ったり、恋だの愛だのロマンティックな言葉よりも目まぐるしい日常に心を支配されたり。なんとなく、ドラマとか世間話の中に生きる大人には、愛の枯渇を感じていました。

 

でも、そうじゃない。本当は、愛が心から枯れることはない。

むしろ、私たちはますます愛に貪欲になっていくのです。

 

かつては、愛は偏っていました。

自分をないがしろにしても、恋を貫く。

あるいは、独りよがりになってガラス細工のような恋に亀裂を入れてしまう。

そんなことばかりしていました。              

 

けれど、少しずつわかってくる。

自分を大切にできないのに、恋人を大切にはできないこと。

私の生き方も、あなたの生き方も、絶対に守り通したいこと。

 

何か一つを守るのではなく、全部守る。全部愛する。

そんな貪欲で真摯な愛を、私たちは抱いている。

 

大人になったのに恋の話だなんて、みたいな小言は無粋。

大人だからこそ、いくつもの愛を死に物狂いで守るのです。

 

そんな生々しくて、美しくて、気高い気持ちを、このアルバムが余すことなく教えてくれるのです。

人生にぜひ、このアルバムを携えてください。

 

 


アカシック 2ND ALBUM『エロティシズム』 全曲視聴トレーラー

 

 

 

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涙と愛と憎しみの味がする芳醇な短編集

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恋を味わう短編集

 

私、言葉は発明品で文章は化学反応式だと思っているのですけど、恋を「甘酸っぱい」と初めて表現した先人って天才じゃないですか?

 

恋は口に入れない。味がしない。

なんなら食べ物が喉を通らない。

目で、耳で、少し近づけば鼻と肌で、相手を感じることはできる。

それなのに、一番相手を感じることのできない味覚で、恋心を宿す様を表す。

 

甘い、苦い、酸っぱい、渋い。

胸焼けする、優しくとろける。

口どけた後、この味はもう味わえないような気持ちになる。

 

そんな幾多の複雑な味を味わえるアルバム、アカシック「凛々フルーツ」。

 

フルーツパフェを食べているときの、次は何が出てくるかわからないときめき。

酸味も甘味もひっくるめた味の連鎖は、「私」という女の生き様、結婚への執着、年に似つかわしくなってきた初心な恋心のよう。

 

初のフルアルバムになったことで、留まることなく拡大していくアカシックの世界が爽快!堪りません。

まるで次々とページをめくりたくなる短編小説のような高揚を、ぜひ味わってください。

 

 

 

 

M1 「結婚」

苦虫を嚙み潰したような楽器の音を携えて始まる、重量のある曲M1「結婚」。

 

「君の朗報に乾杯を 流し台に全て捨てる」

 

題名と冒頭2行の歌詞だけで全てを察することのできるドラマ性。

理姫さん本当にこの歌詞を題材に小説書いてくださいまたそれも布教ブログ書きます。

 

ちなみにこのアルバム、今まで以上に「冒頭で聴衆を致死させる」能力の高い曲が凝縮しています。

なので聴く前に、ぜひとも自由自在に輪廻転生できるようにしておいてください。

 

感情は生々しいのに、「罪悪色の朝陽」「午前三時の消灯」など酩酊しそうな語彙のお洒落さも憎い。惚れる。もう惚れている。

「罪悪色の朝陽」ってカクテル売りだしたい。

それバーカウンターであちらのお客様から奢られたら射抜かれる。

 

感性を研ぎ澄ませて進化したな!と感心していたら、奥脇氏のライナーノーツによるとこの曲はアカシック結成後すぐにできた古株曲だそうです。

恐ろしい。隠したナイフ一体いくつ持っているのでしょうこの人たち。

 

「君が選ばない全ての ねぇ、何が嫌?」

 

目の前5cmの距離で睨まれるような愛と憎しみ。

ハートのイヤリングも赤いセーターもコンビニ袋も全部流し台にぶち込むほどの後悔。

深度の強い世界が幕を開け、あなたの心臓を貫くのです。

 

 

結婚

結婚

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 M2 「8ミリフィルム

今やアカシックの看板となった、5年の活動の重みを背負うスーパーキラーチューンM2 「8ミリフィルム」

 

ちょっと有名にはなったけれど、YouTubeでこの曲を聴いたことのある不特定多数の日本人を正座させて言いたいことがある。

この曲の奥深さを。執念の強さを。ボタンを掛け違えた健気さのような痛みを。

 

 

まず、「国道飛ばさないでいてね それだけは忘れないでね」という冒頭。

 

よく考えてみてください。

 

大好きなのに、もう一緒にはいられない人。

あなたなら、その人になんて言葉をかけますか?

 

 

要するに、冒頭は「元気でね」を理姫さんの言葉で翻訳した結果なのです。

 

何が怖いかって?

別れる相手の死因になるであろう行為を予言できることですよ。そしてそれを「それだけは」と断言できることですよ。

 

このフレーズだけで、またしても小説が始まってしまう。

今までの想い出の数、わかりきった相手の嫌なところ、できる限りお節介は言いたくないけど生きていてほしいという、人としての存在を貴ぶ心。

 

殺傷能力高いフレーズで編み物をしたような歌詞、それが「8ミリフィルム」なのです。

 

その連鎖の果てに「君の才能が欲しかった 超好きだったのにな」という歌詞が止めをさす、キラーチューンになるべくして生まれた曲。

バタフライエフェクト!!(と奥脇氏がこの曲のライナーノーツで仕切りに叫んでいるので真似してみました実はよくわかっていません)

 

 

私個人は、皆が騒ぐ「才能が欲しかった」のくだりよりも「映画見るわ」の一言で泣きます。

 

なんでこんなに大好きだったのに、映画で泣いちゃったって言い訳しなきゃ泣けないの…?意地はりすぎてない…?

大人になって麻疹になると大変なように、大人になって初心になると拗らせてしまうようです。心当たりありまくる。

 

あとはもう、聴け!こんなブログ読まずに今すぐ聴け!と言いたくなるくらいメロディーとギターソロとキーボードソロが良い。

絶頂しそうな瞬間が続きすぎて息できない。

JPOPの神はこの曲に確かに宿っている。

 

それを全部つなぎとめるベースとドラムもセンスの塊。

ドラムの音が最初ひしゃげてるのも、ひねくれた恋の終わらせ方に似合うので大好きです。

 

ちなみに初期「コンサバティブ」から聞き直すと、ステレオタイプな未来」が想像できない女性像を鮮明に脳内に描くことができます。結婚と生き様の間で苦しむ、抉られたような感情を携えてぜひ何度も聴いてください。

 


アカシック「8ミリフィルム」

 

8ミリフィルム

8ミリフィルム

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M3 「サンディバージンディアボーイ」

アカシックはポップである。そう名乗ることを容易く可能にするM3 「サンディバージンディアボーイ」。

私も前にちらりと書いたし、奥脇氏もライナーノーツに書いているけれど「空のブルーは永久ブルーで 不審なチャンスは薔薇の色」があまりにキャッチーで清楚でミステリアスで大好き。

このフレーズが核になる、危うい恋の歌です。

 

 

この曲の価値は、「サンディバージン」という造語の素晴らしさから伝わります。

 

次の日曜日」には少女に生まれ変われるような恋の始まりと深まり。

その純真さが、「ユニバースいち 愛してる」という本気を生み出します。

初々しい2人の日々に浮足立っていながらも、この恋愛は「贅沢な運命」、つまり自分にはもったいないほどの恋だと何となく気づいている。だからこそ、結末が来るのが怖い。

あなたに捧げる愛の真摯さが、ポップさにくるまれて可愛く歌われています。

 

 

 

M4 「今日から夜は家にいるよ」

「幸せじゃないから死ねない」同様、題名に映画化できる起承転結を既に含んだM4 「今日から夜は家にいるよ」。

 

自分を優先してきた女性が、それでも相手と過ごす未来を望んで、不器用な愛を抱え込む様が伝わる曲です。

 

「前髪がよれちゃったり」「野菜中心の何か」など生活の温度がじんわりとしながらも、「あなたのせいで 幸せで狂っていて」と射るような志が垣間見える、ギャルと文学のハイブリッドを作り続けたアカシックらしさがここにもあります。

 

相手の話、適当に聞き流して返事しちゃうところなんかリアルすぎて監視カメラ

シンプルな歌詞に隠された奥行を堪能してほしいです。

 

どうでもいいけどMV中村倫也さん、卵を手で割っちゃダメです(笑)普通にイケメン料理男子です(笑)アカシックの曲に出てくる男には、たとえMVでも出来れば卵の殻をボロッボロに落としてほしかった。あとボウルとかキチンと使われている痕跡があって「普段誰か料理してるし夜にも家にいるでしょ絶対」感が残念。カップ麺の器くらい置いてて良かったよ…。そしてハンバーグ超食べたい。


アカシック 「今日から夜は家にいるよ」

 

今日から夜は家にいるよ

今日から夜は家にいるよ

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M5 「ヨコハマカモメ」

M5 「ヨコハマカモメ」では、アカシックの得意技である毒々しさのある可愛らしさが総攻撃をしかけてきます。はい、すぐやられます。

どうでもいいけど私が人生で聴いてきた中で最も好きなピックスクラッチ部門、第1位。曲に合いすぎ。

 

「そしてつまらない話が好きよ

平穏な日々のために」

 

痺れる。私の頭が避雷針になって全ての電撃が集まってくる。

日常のやるせなさと、それに納得していない本心。冷たい目で世界を見つめながら、疼いている何種類もの感情。やはり「怠惰」を書かせたら理姫さんはお強いです。

 

私的、このアルバムお気に入りフレーズ最優秀賞

 

「小さい頃の写真で着てた

お花畑みたいな頭に

小説でしか見かけない気持ちで

ピースしてた」

 

絶句。擦れていないあの頃に帰りたいけど帰れない嫉妬とか後悔とか悲壮感をどうしてここまで美しく浮き彫りにできるのか。さすがです。

 

 

ヨコハマカモメ

ヨコハマカモメ

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M6 「飴と日傘」

ご本人たちも、「夜型から朝型になった」と評価していたこのアルバム。M3とこのM6 「飴と日傘」で、私は特にそれを感じます。

 

日常と自分の均衡を保つことが、ほんのちょっとだけ上手になったような、どこか大人の恋と景色が広がります。

時に秘め事のような妖しさのある過去を掠らせながら、「ときめき」という素朴で幸福な感情に喜ぶ姿が微笑ましいです。

その中でふとよぎる、「悲しい時も なんとかやってきたんだから」という覚悟。癖のあるポップでセクシーな演奏もぐっときます。

 

 

飴と日傘

飴と日傘

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M7 「ギャングスタ

可愛い。ひたすらに可愛い。どちらかといえば犬派だけどこの曲聴くときは猫派になる。

猫の孤高で気まぐれな姿を甘く歌い上げるM7 「ギャングスタ」。

Hachi作であることも関係してか、コスメの新色出たときのような、新鮮な驚きです。

なんとも妖艶な遊び心。

 

俳句とか短歌とか、あるいはキャッチコピーなんかがわかりやすいと思うんですけど、短い文章の中に想いを詰め込むのって果てしなく難しいんですよね。

下書き、推敲、取捨選択、他者との比較、心を鷲掴みにされるかどうか。考えなきゃいけないことが多すぎる。

 

そんな高度な行為の中で選ばれた、とっておきフレーズたちが愛おしい曲です。

 

「心は急に老いるから

考えずに食べるわ」

 

 

ギャングスタ

ギャングスタ

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M8 「うたかたの日々」

再びHachi作の新色、M8 「うたかたの日々」。大人になって初めて食べた異国のフルーツのような存在。

うなだれるような鍵盤が、憂鬱な孤独の色を描きます。理姫さんの歌詞との相性がえげつない。

 

終わりも行き場もない感情を描くこと、抑揚もつけられないほど低迷した心を見透かすこと、どちらも相当に難しくて、歌詞も曲もしくじったら台無しになる気がしますがこの曲は見事にその世界を完成させています。

 

「少し嘘があるわ

何も嘘じゃ無いけど」

 

さて、このセリフを大物女優に言わせる名作映画は、どこに行ったら見れますか。

 

 

うたかたの日々

うたかたの日々

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M9 「ロリータ」

M8と共鳴はしているけれども、開始早々「奥脇氏にバトンタッチしたな」と理解できる定番カラーコスメ的な曲、M9「ロリータ」。

「コンサバ」「プリチー」から引き継ぐ伝統芸がやってまいりました。

もう、図書館の文学小説の棚に私は顔を突っ込んでいるのでしょうかと錯覚するほどのフレーズの目白押し

 

「礼儀みたいなハンカチの折り目」

「資本的夕暮れ」

「花嫁になりたくて

失ってきた芸術」

 

もう、言葉だけ羅列しても、この毒を飲んで私は棺に入りたいってレベル。

 

これらのフレーズを繋ぐ文脈になる感情は、はぐらかされたようにどこか曖昧。

だけど、「懸命な赤」を臨む姿勢、それに伴う苦悩、それは理姫さんがいつも伝えてくれる、正直な生き様と恋。

色気ある演奏をバックに、ロマンティックに倒れましょう。

 

 

ロリータ

ロリータ

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M10 「華金

そうです、あのJPOP大好物でありアカシックの得意技「明るいのに切ない」です。M10 「華金」です。キャッチ―とセンチメンタルのバランスの良さはM2と良い勝負です、実は。

 

夜ってなんであんなに人をダメにしてしまうんでしょう。

お酒と一緒で、もともとダメな私だったことが暴かれるだけなんでしょうか。

朝になれば全部わかるのに。虚しい愛だったって。

 

それでも、刹那的な欲望に溺れたい。

引き留める私より、足を進めてしまう私が勝つ。

 

「ゆめかわ」チックなパリパリナイトの夢を表しながらも、酒と香水と煙草の匂いが一度に漂うあの「夜」感がせめぎ合ってくる。

 

引き裂かれそうな悲しさは、せめて歌で明るくしてあげないと歌えない。そんな曲じゃないかなと私は勝手に思ってます。

ライブで聴くと楽しくて頭空っぽになるので、ぜひヘッドホンでゆっくり聴いてみてください。目の下にハンカチ貼り付けながら。

 

 

華金

華金

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M11 「馬鹿なハスキーエイジ」

全曲ライブ以外では聴けることすら希少価値。M11 「馬鹿なハスキーエイジ」(私はまだナマで聴けていませんお願いです聴かせてください)

歌詞の全てが美しい。幻想的で優雅。

 

それでいて、やはり「朝になるのを カラスと気づいている」などアカシックらしいエッセンスを加えることも忘れない、憎い存在。

 

空を見上げるような、漠然とした前向きさ。

悲しいこともきっとたくさんあったし、おそらくこの曲の男女も上手くいかなかったんじゃないかと思えるけど、そんな2人を「馬鹿」と笑えるような心の余裕がちょっとだけある。

恋が終わったら、仕切り直しに旅に出ようか。そんなときに連れていきたい曲です。

 

 

馬鹿なハスキーエイジ

馬鹿なハスキーエイジ

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M12 「恋は媚薬だなんて冷めるわ」

短編小説がクライマックスに近づいたにもかかわらず、まだ涙と血と汗を搾り取ろうとしてきます。そんなセンチメンタルの塊M12 「恋は媚薬だなんて冷めるわ」。

 

M9「ロリータ」に続いて歌詞がロマンティックの宝石箱。

 

「映画はノワール

慣れ親しんだあたしの心だ」

 

ってどうやったらその等式思いつくんですか?キレッキレのセンス。

 

「冷たい床に 頬をあて

繰り返し思い出して 恥じるわ」

 

この言葉から想定される、絶望に耐え続ける日々。

あなたがいなくて退屈で堪らない日々。

 

それなのに、心に残る純粋さが恋に対する本気度を示します。

 

「神様 会いたいいますぐに

熱あがってるの グッときているの」

 

まだ未練と呼ぶこともできない、燃える愛。まだ相手を憎いと感じることもできず、持て余している熱。

神様に願うしかないような、やり場のない健気さが胸を刺します。

 

 

恋は媚薬だなんて冷めるわ

恋は媚薬だなんて冷めるわ

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M13 「夢遊」

とんでもない結末でこのアルバムは終わろうとしています。M13 「夢遊」。

 

サビで対句される

「嫌だ 好きにならないで」

「嫌だ 嫌いにならないで」

の交差が、愛に狂う姿そのものです。ここの理姫さんの絞り出すような歌い方もピカイチ。

 

「容易い事のように

知らず寝息が欲しい」

 

つまるところ全ての恋愛は、この願望によって突き動かされているのではないかとさえ感じます。

それを端的に表すことのできる技術。やはりアカシック、売れなきゃおかしい。

 

歌詞の中で一貫して相手を「あの野郎」と呼ぶところに、恋心はそう単純じゃないことが窺えます。「好き」って一色じゃないですもんね。憎たらしさも、まるごと愛。

 

「悪い事 ひとつしかわからない」

 

「最終的絶叫にならないように

あたし遠くにいるしかない

嫌なことしかない」

 

これがおそらく、この曲の答え。

 

離れるしかない。

離れれば、「あの野郎」の望み通り。

私にできる唯一のこと。

一番悲しいこと。

 

呪いかと思うほど真っすぐな愛情の報われない結末を感じながら、意識失いそうになりながら、ひたすら終わらないアウトロに酔いしれましょう。

 

 

 

 

夢遊

夢遊

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いつまでも衰えない、瑞々しい愛の歌

アカシックの描く世界観は、いつだって「今」の歌なのです。

 

若返りを期待したりしない、ひねくれたり逆に素直になったり大人になった女性が「今」見ている景色、感じている思い。

 

それでも、心はいつまでも老化しない。愛の尊さ、繊細さ、虚しさ、嫌悪感、それを乗り越えた幸福感、すべて享受して、すべてを歌詞にしてくれる。

偽りのない「今」の歌、それがアカシックの歌です。

 

古びてしまわない感性を、言語の連鎖を、愛を描きつくす態度を、ぜひとも社会に味わってほしい。

こんなに良いバンドがいたなんて、と辛酸をなめるような気持ちで後悔してほしい。

 

私の平成最後のお願いは、アカシックを知ってくれ」です。

 


アカシック『日本凛々ツアー』TEASER

 

 

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原点から「凛々フルーツ」までを通して聴くことで味わえる深み。

 

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所々に滲む毒っぽさがたまらない人に。

 

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ポップさ、清らかさ、優しさ。彩り豊富なパレットに目移りしそうです。

 

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M7M8についてのお断り

 

かつてのキーボード、Hachi

綺麗な長髪にやんちゃな笑顔のイカシタ姉ちゃん。

ギャングスタ」「うたかたの日々」、2曲の作曲者。

どのように書くか悩みました。そして書いた後である今も悩んでいます。

 

いなくなった理由のわからない好きな人。

彼女のことを書くことは、美しい思い出なのか。未来の足枷なのか。

それでも、彼女が作った曲への想い、この2曲を含めた全曲ライブをしようと意気込むアカシックの覚悟は揺るがない本物だと信じました。

私なりの拙い言葉で書いたものだと受け止めていただければ幸いです。

 

月野にこ

危うい恋と気高い愛に向き合い続ける女の本性

 

 

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「女」を妨げるもの


「女」という漢字は、両手をしなやかに重ねてひざまづく姿から出来ているらしいと聞いた事があります。
なんて、なんて露骨なんだろう。

「好き」も「嫌い」も、「妄」想しても「嫉妬」しても、つきまとう「女」。
部首が「女」の漢字を眺めているだけで、私たちが背負う羽目になった疎ましい重さに目眩がします。
今は昔、田んぼで力を振りかざしている者たちが作り上げた文字というシロモノはことごとく残酷。

でも、皆は本当にそんな「女」が良いの?
容易く跪いてくれるような「女」が好きなの?

「女」として生きる覚悟。
「女」が愛を歌う強さ。


これこそが理姫さんの書く歌詞の醍醐味なのです。
進化したアカシックの魅力たっぷりの「Dangerousくノ一」。存分に味わってください。

 

 


M1  「CGギャル


アカシック「CGギャル」


可憐で強烈な拳の連打、M1「CGギャル」。うねるベースリフによって幕は切って落とされます。
旋律の限界ぎりぎりに詰め込まれた歌詞は、強い恋心の行き場を無くして危険な状態に陥る様と連鎖しているようです。

あまりにギャル。とんでもなくギャル。
チュープリという単語を久々に耳にしたけど、その言葉が出現しても違和感がないほど、あまりにギャル。
なのに、とても痛々しい。


「綺麗になったら言うんだ
そうね一昨日来やがれみたいな」


なんて狂おしくて切ない未練がましさ。
かと思えば


「本当の気持ち教えて
お利口さんにしているからずっと」


バブル期を演じるバチバチギャルには思えない、泣いて母親にすがるよう剥き出しになった弱さ。
意地っ張りギャルと純粋少女が交錯する世界。「女」がどれほど複雑で真剣に闘ってるか、思い知らせてやると言わんばかりの戦線布告です。

 

CGギャル

CGギャル

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M2 「サイノロジック」


アカシック「サイノロジック」


今後のアカシックの核になるようなキラーチューン、M2「サイノロジック」。これをためらいなく2曲目に持ってこれる余裕に脱帽です。

今までのアカシックになかったような心地よい清らかさと疾走感。
なのに歌詞を読むと、え、この曲がこんなに切ないなんてと面食らうこと必至。


セーシェルのあたし」、「月を小指に連れてあくびする昨日」などなど、80年代歌謡曲のような汚れのない言葉が耳に注ぎ込まれます。
その一方で「ヤニ臭い程サイノロジーなんて言うところが理姫さんらしいナマの感覚。

「半端なガラクタになっていく気がするの」

透明さに身を委ねていると、急にこういうフレーズが胸を刺してくる。やっぱりキラーチューン。

 

サイノロジック

サイノロジック

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M3 「香港ママ


アカシック「香港ママ」


言わずもがな第1印象は、踊りたくなる遊び心!
けれど、隙間に入り込むフレーズが格言めいていて、油断していると痛い目に遭う。それがM3「香港ママ」。

「人生ほとんど酔拳とか、「どうして港は香るの」とかね。
蝶のように舞い、蜂のように刺すとでも言いましょうか。

 

香港ママ

香港ママ

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M4 「溺愛」


邦楽の歌詞って「好き」「愛してる」を多用すると非難される傾向があると思うんです。けれど、それはおそらく「好き」「愛してる」という言葉そのものに責任はないんですよね。

その言葉が出てくるまでの描写や表現があまりにストレートすぎたり、工夫を凝らしていないように感じられたりするときに「愛してる」ばっかりだな!と揶揄されてしまうような、そんな印象があります。

ですがこのM4「溺愛」は、「どれほど好きか」という表現が見事なものですから、「愛してる」という言葉がサビに鎮座しても嫌味にならないんです。


「片目で見ても  ほどほどにしても
恥ずかしくても  ほっといても好き」


愛の深さは容易く想像を絶するのです。
最後に「好きかも」と照れるように歌うところが、前代未聞の愛の大きさに自分でも驚いているようでキュン。

 

溺愛

溺愛

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M5  「ベイビーミソカツ」


愛している。けれど、満足していない。

恋愛の歌って「これから」と「さよなら」がどうしても多くなるのですが、実際恋愛してみると上記のような気持ちの方が圧倒的に多くありませんか。


好きでいたいのに退屈してしまう、そんな絶望には届かない憂鬱さが胸いっぱいになるとき。

M5「ベイビーミソカツ」の歌詞はそんな気持ちをあぶり出します。
花火だって、朝陽だって、見ているものは同じでも、気持ちは移ろいでしまう。

そんなやるせなさが詰まった1曲。このアルバムの中の「どうして私のことこんなに知っているの」大賞です。

 

ベイビーミソカツ

ベイビーミソカツ

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M6 「真夜中のクローンラベル」


奥脇達也氏のセクシーボイス炸裂。

気まぐれに浮遊する音たちの暗くて柔らかい世界。

よくわからないタイトルすらお洒落。

それがM6「真夜中のクローンラベル」


もう、持っている武器は先に教えておいてくれ。じゃなきゃ不意に心臓を射られてしまう。

悔しいのは、相手に対してなのか。それとも自分に対してなのか。
終わらない後悔や自問自答が続くかと思いきや、「明日も仕事だ寝なくちゃ」と締める。
そんな虚しいやり過ごし方まで含めて、とてもリアリティのある気だるさ。
アカシックが作る世界が、アルバムを出すごとに拡大している実感を得ます。

 

真夜中のクローンラベル

真夜中のクローンラベル

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M7 「女」


「君が思う  イカシタ女
あたしが絶対見せてあげる」


このアルバムの真髄、M7「女」。
こちらは「溺愛」とは対極で、「好き」「愛してる」を使わずに感情の強さを表現し尽くす曲です。
君の理想(イカシタ女」)にはなりたいんだけど、決して自分らしさを崩したり、へりくだったりする訳ではないんです。格好良い。かと思えば時々見える素肌みたいな本音が超かわいい。


 

女

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M8 「オールドミス」


気高くて優しくて凛々しくて、嫌味のない色気もあって、とにかくそんなステキな形容詞たくさん並べたくなるような魅力目白押しのM8「オールドミス」。

局地的な感情を歌っているというよりは、まるで座右の銘として携えたいような、街中でへこたれず歩くためのBGMにしたいような、押し付けがましくない自負がある曲。


「オールドミス」とは結婚してない売れ残りという意味なのですが、決して自虐的ではないところが素敵。


気ままに、誇らしく。
これぞ、令和の時代のスタンダードになってほしい曲です。(発表時は平成27年ですけど)

オールドミス

オールドミス

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M9  「さめざめ」


今までの作品で見せてきた愛の生々しさ、忘れたとは言わせないわよ。


そう言っているかのようなラスボス、M9「さめざめ」。

 

先程までの濁りのない水気が突如血と涙に塗り替えられたごとく、露呈する絶望感。
懸命に立ち上がろうとするものの、苦しくて苦しくてもがいていることがひしひしと伝わります。

「糞だるい不在の輪郭を抱きしめている朝だ
また朝だ  朝だ」


「寂しい」という感情をどうやったらこんな風に書けるのか。
随所に言葉の化学反応が起きていて、とんでもなく痺れます。

「あたしはピンヒールに命がけです」
「関係をまた愛したいという趣味の悪さ」


愛の重さ、愛ゆえの憎しみ。
愛と自己の間で揺れ動く不安。
理姫さんの必殺技です。

 

 

 

さめざめ

さめざめ

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本当の「女」の姿



「女」という言葉は、成り立ちから考えると私たちを閉じ込める監獄のようです。


けれど、「女」ってもっと、本当はもっと深く、広く、繊細さも大胆さも兼ね備えていて、黙って跪いてあげたりなんかしない、自由な存在。
誰かと私を好きでいる気持ちに素直でいられる存在。
例え危うい恋であっても妥協しない存在。


そんな真っ直ぐな生き方を、恋の仕方を感じられるアルバムが「Dangerousくノ一」です。

宵の街で生まれた「コンサバティブ」、尖ったピンクオーラ満開の「プリチー 」と比較して「落ち着いたね」という印象をこのアルバムにお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

でも、それは大きな勘違い。
むしろ今作は、理姫さんの視線がこんなにも世界の隅々まで届いていて、アカシックの演奏力がそれを表現し尽くしていることを思い知る衝撃作なのです。

最も危険なのは、この作品を聴かずに終わることかもしれません。

 

 


アカシック「サイノロジック」ギター弾いてみた

公式弾いてみた

 


アカシック「香港ママ」振付MOVIE

公式踊ってみた

 

 

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あまりに可憐で露骨でセンチメンタルな、ぶりっこの理由

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強いられないピンクの流儀

気づけば、教室の席は男の子と女の子で列を分けなくなりましたし、ランドセル売り場は絵具をつけたパレットのようになりました。

性別の隔たりを感じる場面もたくさんあるけど、私たちが小さい頃とは違うことがたくさんあるのも確か。女の子はピンクを着なきゃいけないなんて言っちゃうと、今ならSNSで炎上しちゃうのかもしれません。

 

そんな時代を生きることに慣れてくると、このCDジャケットには目を疑います。

 ショッキングピンクの「ショッキング」を、ここまで表現できるものでしょうか。

背景もワンピースもネイルも衝撃の色に包まれた女性は、身体じゅうに主張を貼り付けます。

リボンにハイヒール、宝石。いかにも「女の子がつけるもの」。

「彼氏♡」「女」「プリチー」「DEATH」「やけっぱち」、見るだけで胸焼けしそうな文字の羅列。

なのに、時代錯誤じゃない。押し付けがましくない。「見るならどうぞ、ご自由に」と言わんばかりです。

一体、彼女は何者で、彼女を主題にした作品を世に輩出したアカシックというバンドは何者なのでしょうか。このアルバムを聴いて、せめぎ合う女の価値観に沈んでください。

 

アカシック?という方はこちらもぜひ。

 

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とんでもない女の真っ当な願いを描くドキュメンタリーアルバム

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裏切りで始まるアルバム、コンサバティブ

 

突然ですが問題です。「コンサバティブ」とはどのような意味でしょう。

ヒント1。いわゆるファッションの「コンサバ系」の「コンサバ」のことです。大人OL女子の着回し21daysとかに出てきそうなやつです。

ヒント2。政治でも使われることのある単語らしいです。らしい、ということしか調べてもわかりませんでした。教養というものは大事らしいです。

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ヒント3。この現代アートが擬人化したようなCDジャケットのアルバムが「コンサバティブ」というそうです。

正解は「保守的な様、またはそのような人」です。ヒント3が完全にあなたを狂わせたでしょう。どこが保守なんだと。

 

ジャケットの女性から滲み出ている、保守どころではない刺々しいオーラと冷ややかな視線。

このアルバムは、まるでドキュメンタリー映画のように丹念に同じ女性の有様をとらえ続けます。アルコールの匂いを全身にまといながら最終列車で感情がこみ上げる女性の姿に、堂々巡りをしてしまう私たちの心の葛藤を重ねずにはいられません。「ナマ」の感覚が肌にまとわりつくような言葉の波が押し寄せ、噛り付いて1冊の小説にのめり込んだような瞬間にトリップしてしまいます。さあ、酒を肴にこのアルバムを聴け。

 

アカシックって?という方はこちらもどうぞ。

 

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