好きにさせてよ。

好きにさせてよ。

偏食な趣味を、つらつら綴る。字圧強め文字のブルドーザー。可愛い連中/モーニング娘。など

あまりに可憐で露骨でセンチメンタルな、ぶりっこの理由

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強いられないピンクの流儀

気づけば、教室の席は男の子と女の子で列を分けなくなりましたし、ランドセル売り場は絵具をつけたパレットのようになりました。

性別の隔たりを感じる場面もたくさんあるけど、私たちが小さい頃とは違うことがたくさんあるのも確か。女の子はピンクを着なきゃいけないなんて言っちゃうと、今ならSNSで炎上しちゃうのかもしれません。

 

そんな時代を生きることに慣れてくると、このCDジャケットには目を疑います。

 ショッキングピンクの「ショッキング」を、ここまで表現できるものでしょうか。

背景もワンピースもネイルも衝撃の色に包まれた女性は、身体じゅうに主張を貼り付けます。

リボンにハイヒール、宝石。いかにも「女の子がつけるもの」。

「彼氏♡」「女」「プリチー」「DEATH」「やけっぱち」、見るだけで胸焼けしそうな文字の羅列。

なのに、時代錯誤じゃない。押し付けがましくない。「見るならどうぞ、ご自由に」と言わんばかりです。

一体、彼女は何者で、彼女を主題にした作品を世に輩出したアカシックというバンドは何者なのでしょうか。このアルバムを聴いて、せめぎ合う女の価値観に沈んでください。

 

アカシック?という方はこちらもぜひ。

 

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(注)

このブログは、作詞をしている理姫さんの心情を推測したり、意図を予想したりするものではありません。あくまで私個人の拙い感想文だとご理解いただいたうえで、お読みください。

 

M1 Galaxy Bang

まさに銃弾。心臓が撃ち抜かれるように曲の衝撃があなたを狙い撃ちするM1 Galaxy Bang」。

前作「コンサバティブ」に出てきた、深夜のしみったれた街が似合う女性は、一転あなたを誘惑する小悪魔に様変わりしています。私たちは、今からこのアルバムに誘拐されるのです。

どでかいファーストインパクトを与えつつも、色気も毒気もしっかりと魅せつけてくれるこの曲は、攻撃ではなく「胸キュン」であなたを射抜きます。バキュンバキュン!

 

 

GalaxyBang

GalaxyBang

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M2 「プリチー」

閃光のような衝撃は止まりません。M2 「プリチー」では2曲目にして死を覚悟してください。

この曲の核心はもちろん、DEATHorプリチー」です。

ずばり、可愛くなけりゃ生きていたってしょうがない。

これこそ、女の子にしかわからない生々しい本心です。前髪を切りすぎた日の憂鬱も、何種類もリップを買い集めてしまう浪費も、全部この言葉がなければ説明できないのです。

歌詞の女性は、彼氏やピンクの重要性と煙草を吸ってしまう惰性を天秤にかけたり、「女の素顔は成人雑誌(アダルトマガジン)」と言い切ったり、見た目と本性が違うことを自覚しているのです。

 

「男は騙されてお願い」

 

とこぼすくらい、必死に造り上げた「女」を生きています。

それでも、「女の意地を 見抜いて」と本心を吐露します。なんて、なんて可愛い悩みなんだ。

「冴えた刺激とか大体偽物(パチモン)」なんて皮肉も言うくらい物事をよく見ることのできる女性は、男がどれくらい本気なのか確かめたくて、「怒りのキス」を求めるような過ちも仕掛けます。

いつも不安だから、いつも本気でいてほしい。

いつも建前と本音まるごと愛してほしい。

たたみかけてくるギャルの純真さに甘い眩暈がする、渾身の一撃です。

 

 

プリチー

プリチー

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M3 「ヨコハマクール」

早朝の都会で酔いつぶれて千鳥足で歩く若者にも、こんなドラマがあるのかなと妄想しちゃうM3 「ヨコハマクール」。

「コンビニ袋を下げ踊る」なんて、歌詞の舞台になっている伊勢佐木町の湿度や匂いまで漂いそうな描写に感嘆。

別れを受けとめることができない女性の強がりは、もはや猟奇的にも感じます。けれど、その狂気と表裏一体になった未練が切り裂かれたように切ないのです。

 

「さようならはまだ二人のものじゃあない」

 

こんなに胸が痛む歌詞なのに、メロディーがやさぐれ感満載なのもまたセンスが良い。強がる態度がそのまま音になっていて、女性の人生に突如現れた消化できない絶望が際立ちます。

 

 

ヨコハマクール

ヨコハマクール

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M4 「スーパーサマーライン~消えたはずのセレブのあいつ~」

伊勢佐木町で失恋したギャルが、次の曲で消えゆく青春のような儚さを歌うだなんて誰が想像できますか?

M4 「スーパーサマーライン~消えたはずのセレブのあいつ~」の何が巧みかといえば、情景描写のオリジナリティ。

「可愛い」と「郷愁」のバランスのとり方が絶妙で、個性を殺さない比喩表現が連続します。特に好きなのがこの2つ。

 

「焦る心はノーメイク」

「おかげさんであたしなんて

日焼け止め大人買い

 

嗚呼。探しに行くセレブの元カレはいないけど、夏が待ち遠しい。

この曲はこのアルバムに入っているからこそ、価値が最大限に伝わってきます。

 

 

 

 

M5 「美人ビジネス」

プライド、と言うとちょっと見下して突っぱねたような、近寄りがたい雰囲気が出てしまう危険性があります。

でも、M5 「美人ビジネス」で描かれるのは、「好きにやるわよ」という奔放なプライド。セレクトされる語彙も余裕のある歌い方もこなれ感満載の演奏も、1曲丸ごと座右の銘にしたいほど全部が格好いい。自分の人生で大切なのは「美貌と金」と飾らないであっさり言っちゃうのも、嫉妬するほど素敵。

 

美人ビジネス

美人ビジネス

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M6 「ピンク」

「あなたの腕の中で あたしの人生台無しがいい」

 

もう、これは発明です。こんなに恋に覚悟するのも容易いことではないけど、その気持ちをこの1フレーズに収めてしまうのも究極の技。

全体的に、M6 「ピンク」はいわゆる「重い女」と誤解されそうな歌詞です。けど、幸せにも両想いにも慣れていない女性が、自分なりに健気に愛そうとする真摯な姿勢が痛いほど表れています。

愛情表現が危なっかしくて不器用で、自分の過去にも心当たりありすぎて辛いって人めちゃくちゃいるのではないでしょうか。

 

 

ピンク

ピンク

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M7 「アルカイックセンチメント」

小さい頃に思い描いていた夢と現実が、なんだかどんどん離れていることに気がついてしまう。虚しい、悔しい、やってられない。でも、こんな私でも、誰かに愛される価値があると思いたい。

私たちの心を丸ごと映したような歌詞が連鎖するM7 「アルカイックセンチメント」。

かつての理想を「大きな花束」と表現し、その理想にすがる今の気持ちを「冷凍庫に花びら」と対比させる美しさ。まるで生死。えぐられるようなリアルさと感傷的な文学性が共存します。

 

アルカイックセンチメント

アルカイックセンチメント

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M8 「鶺鴒」

アルバム序盤から早々に銃撃を受けて瀕死なのに、ここで遂に息の根を止めてくるような曲です。

 

「どれだけ首折り曲げても

誇らしくある不自然な睫毛は

指している」

 

曲がこの部分に差し迫ると、毎回毎回心臓をかっさらわれます。

こんな別れ話の日にも、いつも通り睫毛を盛るメイクをした意地の張り方とか、項垂れて動けない惨めさとか、皮肉なことにその強がりの象徴になった睫毛が相手の方を向いていて、まるで現実を受けとめきれず未練たらたらの気持ちのようだとか、これだけの文字数で、なんでそんなこと書けるの…状態です。

歌詞を額縁に入れて毎朝拝みたいくらい好き。申し訳ございません、自重します。

ちなみに、この曲はメロディーも演奏も狂おしいほど格好いいです。ギターのカッティングとベースの登場タイミングが神に導かれた采配具合。

 

鶺鴒

鶺鴒

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恋に翻弄され、恋を歌い続ける「女」

 

甘く火照るような初心さも、蹴り飛ばしたくなるような失恋も、そよ風のように懐かしい気持ちも、気怠くて煮え切らない苦しみも、このアルバムは一貫して「女」という立場から恋を追いかけ続けます。

 

私の主観で男らしさ、女らしさという言葉の是非を論じるつもりはありません。

ただ、このアルバムを聴くことで、心から「女に生まれて良かった」と思えるのです。

潔く、美しく、こんなにも「女」として全力で生きられたらと、憧れずにはいられません。

好きなときにピンクをまとうことも、自分の思い描く「女」という生き方を選択するのも、恋するが故にぶりっこすることも、全部素敵だと私は感じます。

 

日本中の女の子に、このアルバムが届きますように。

 


アカシック「プリチー」Trailer

 

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