好きにさせてよ。

好きにさせてよ。

偏食な趣味を、つらつら綴る。字圧強め文字のブルドーザー。可愛い連中/モーニング娘。など

知らなかったなんて減らず口叩いても遅いんだから

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油断していました。まんまと。



昭和の芳醇さ、彩りをほんのり醸しながらも、90年代J-POP全盛期を彷彿とさせるような「メロディこそトドメ」といわんばかりのキャッチーな音楽。

平成という時代に、横浜という街に生まれ落ちた人生を丸ごと飲み込んだ世界観。
愛とは、生とは、女とは、答えのない問いに向き合い続ける、愛憎劇さながらの歌詞

前作「エロティシズム」は、アカシックの集大成かと思えるくらいに彼らの強さが丁寧に研磨されたアルバムでした。
この作品が世に出たことによって、「アカシックとは」という定義を述べることができるとさえ思っていた人もいるかもしれません。

そんな折、突如「4ヶ月連続配信シングル」の発売が公式からアナウンスされました。

私たちは、以降4回に渡って度肝を抜かれることになります。
前作までに築き上げた定義に則ることのない、新しいアカシックがそこにはいたのです。

ちなみに、更に会場限定ミニアルバムとして、配信シングル4曲に新曲2曲を加えた「POP OFF」をアカシックはリリースしました。
なので、度肝を抜かれた回数は正確には計6回に上ります。


脱皮し続ける、愛憎劇の一幕。
ファンさえも呆気なく裏切る現在進行形のアカシックを、あなたが目撃してください。

 

 

 



M1 「LSD



甘酸っぱい物寂しさ、幼心に連鎖させた終わりの気配、色とりどりの世界に混ぜて誤魔化した切ないやり切れなさ。
それがぎゅっと凝縮したM1 「LSD」。

リゼルグ酸ジエチルアミドの略称がLSDらしいですが、関係するのかしないのか。
幻覚症状を引き起こす、トリップできるお薬みたいですが、関係するのかしないのか。
闇の中だからこそ、考えるのが楽しい。

「明るいのに悲しい」という自分たちの常套手段に持ち込むのかと思いきや、いとも簡単に定跡を破壊してしまいます。
トリガーは間違いなく、随所で響き渡る絶叫。

私たちは、恣意的な足元の悪さによって不安を煽られるような気分に陥ります。


しかし、純情と狂気のハイブリッドはいつしか私たちに依存性をもたらしてしまうのです。

「小さな頃に願ってばかり
いたのに今も同じ」

あの叫び声は、可愛い世界に溶かしきれなかった大人の泣き声なのかもしれないと思いながら聴いてしまうのです。


アカシック「LSD」MV

 


アカシック「LSD」2018.12.20@渋谷ストリームホール

 

 

LSD

LSD

  • provided courtesy of iTunes

 



M2 「Death is Not the End」


ただひたすら、部屋の中で絶望に打ちひしがれている「あたし」。
悶え、苦しみ、記憶に苛まれていく様が克明に描かれています。M2「Death is Not the End」。

「あたしに下した
別れも永遠か
愛は悪魔か」

好きの反対は嫌いではなく無関心だと、世間では言います。
つまり、嫌悪、憎しみという感情は、好意の対極にあるものではなく、好意と連続しているものだと考えられるのです。

愛していたから、憎い。
愛しているから、憎い。

抜け出せない愛と憎しみの連続性が、鎖のように連なっています。

理姫さんは、いつも死を肯定しません。
過去にも、どれだけ絶望の淵に立たされていても「幸せじゃないから死ねない」と歌詞に書きました。それほど、死を受け入れません。

死んで終わり、という解決法は決して取らない生き様の彼女が背負う絶望。
終身刑のごとく残り続ける痛み。
その絶望に付いた名が「Death is Not the End」なのです。

彼女は、歌詞の中でその名をこう翻訳します。

「死んでも許せないお話」と。

 

Death is Not the END

Death is Not the END

  • provided courtesy of iTunes

 


M3 「禁煙成功」


生活臭というものを控えながらも、恋のリアルな光景を浮かび上がらせる。
そんな理姫さんの必殺技がM3「禁煙成功」で上手い具合に炸裂しています。

「偏っている」あなた、「時代遅れの私」
アンバランスな二人のやり取りがちぐはぐなものであることは、想像に容易いでしょう。


しかし、そのバランスの悪さが話の主題ではありません。

歳月をかけることできっと歩み寄れる日が来るのだから上手にバランスが取れるその日まで共にいよう、と願う恋心こそが核です。

「あたしのオススメなバンドが
有名なテレビにいつか出るんだから」

アカシック様、是非とも金曜の夜8時にテレビでお会いしましょう。

私はアカシックを時代遅れだなんて思いませんので。

時代が間に合っていないのです。

 

禁煙成功

禁煙成功

  • provided courtesy of iTunes

 



M4 「エリザベスロマン」


女帝 of 「POP OFF」。
アカシックの楽曲では珍しい類の疾走感が、無情な日々を暴き出します。

「衝撃の発明
24時間落ちないマスカラ
落として寝る」

私たちが常習的にこんな矛盾を犯していたこと、誰が気づいていたっていうんでしょうか。
気づかれていないものに気づくこと、この歌詞こそ理姫さんの衝撃の発明です。

この世界は、危うくて理解不能
そんな事実をサラリと突きつけられます。

「悪意で溢れた
女は闊歩の仕方を知らない
弱さが喉を詰めていく
そんな日を助けていく」

世界の危機に気づいたうえで、正しく生きていく覚悟。
悪意によって自信を掠め取られた人、弱さに苦しむ人を救い出す決意。

こんな強さもサラリと出す理姫さん。

押し付けがましくない優しさが、矜持のある立ち姿のようで美しい。
絶望の果て、世界の虚しさを知っているからこそ打ち出せる、気品ある強さを感じられます。

なお、思いがけない間奏の仕掛けはとってもお茶目で「エリザベス」様というより「ベティ」ちゃん。

是非聴いてみて。

 

 

エリザベスロマン

エリザベスロマン

  • provided courtesy of iTunes

 


M5 「かしこい食卓」


笑ってる人が本当は一番怖い。
そんな座った目の恐ろしさがごっそり歌詞に落とし込まれた曲、M5「かしこい食卓」。

唯一、配信もされていなければMVも公開されていない曲。
会場限定ミニアルバムの中に秘められた宝物。
ライブ行きましょう。

矢継ぎ早に注ぎ込まれる歌詞は、理性と狂気の境目に立たされている切迫した緊張を感じさせます。

渦巻いて排水溝に流れ落ちる水のような、淡々と連なる歌声。
仄かに漂う気味の悪さを演出する演奏。
バンドサウンドを主役に置かず、電子音に世界を敢えて侵略させる作戦。
未来しか感じない、アカシックの新しい音。

こんなの、初めて見るアカシックです。とんでもないです。
でも歌詞は引用してあげません。
会場に来た人の秘密だもの。
ライブ行きましょう。




M6 「地獄に手を振って」


アカシックが今まで大切に育ててきた愛の深さ、包容力を前面に押し出したM6 「地獄に手を振って」。

恋の歌は、聴いてほしい。
流行りの歌は、聴かないでほしい。

1番、2番で対となる思いは、誰にも邪魔されない愛の実態と共有を求める気持ちなのではないでしょうか。

「ふたりの世界はいつでも
優しい絵本の中で
地獄に手を振っているよう」

理想を閉じ込めた虚構のように、絶望から疎外された二人だけの空間。
愛を共有することで、その空間を創り出すことができるのではないか。

そんな切なる願いを込めた歌に、私は聴こえます。
と、言いたいところなのですが。


アカシック「地獄に手を振って」MV


毎度毎度MVを見て、私はとんでもない見当違いをしているのではと疑っています。

結末は敢えて事細かに明かさない。
ハッピーエンドなのかバッドエンドかもわからない、そんな映画のように煙に巻かれる曲。

MVを見て、あなたはこの曲に何をお思いでしょう。

間に合うよ、今なら。



私は前述いたしました。
このバンドが織りなす愛憎劇は現在進行形だと。

愛憎劇の続きは、ステージライトを浴びながら待っています。
共にライブに行きましょう。

 


アカシック会場限定ミニアルバム「POP OFF」Trailer

 
アカシック「憂い切る身」2018.12.20@渋谷ストリームホール


アカシック『8ミリフィルム』 from "日本凛々ツアー"@キネマ倶楽部

 

 

 

 

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