ひねくれアラサーは何故つんく♂さんの書く地球と青春と人生の話に納得して泣いちゃうのか考える
(注意事項)
短い文章ではない。昼寝したせいで夜中眠れなくなったとか、彼氏にドタキャンされてぼっちマック決め込んでるとか、だらだらこのままネットサーフィンするか雑誌を読むか悩んでるとかそういう人向け。
枯れアラサーにも受け入れられる青い春
世界一どうでもいいカミングアウトなんですけど、いかにも青春モノ!という雰囲気が私はなんでか苦手なんです。
青臭い恥ずかしさとか、むずむずしたくなる痒さとか、そういう感情を受け入れることに対する恐怖もあるし。
なんで若いときはあんなに純粋で輝かしい日々を送っていたのに、今ではこんなに枯れちまったんだろうという後悔もあるし。
あまりに理想的な青春モノの中にうっかり自分を投影してしまうと、せっかく綺麗な色ばかりだったパレットにドブネズミ色が紛れ込んじゃう気分になる。
だから私は青春モノと無縁で良いんです、今日もインスタントラーメンすすりながらYouTubeとTwitterがお友達なんですって思っているんです毎日。
そう思っている私の、最近よく聴くお気にの1曲。
モーニング娘。'19『青春Night』(Morning Musume。'19 [The Youthful Night])(Promotion Edit)
嘘やん。
自分で言ってしまいました。
アラサーが突然モーニング娘。'19にドはまりしたことは以前書きました。ちょっと過激に。
でも、すっごい不思議なんですけど、めちゃくちゃ曲を聴いているんです。
メンバーが可愛いとか推しが尊いとか、そういう感情を乗り越えて。
特に私は、歌詞が好きじゃない曲は自分のライブラリに入れないという(他人様からするとウルトラ聞く価値のない)ポリシーがあるんですが、モーニング娘。ちゃんは全アルバム15枚+諸々ちゃんと入ってます。
要するに、つんく♂推し。神推し佐藤優樹、二推し寺田光男。
つんく♂推しになったことに自覚が芽生えて以降、記憶をさかのぼってみたんですけど、「皆が聴いているから」以外の理由で初めて「好き」って感情を私が抱いたつんく♂曲がこれなんですよね
その名も「青春時代1.2.3!」。
マジかよ。
むしろ私、青春モノ大好きやん。
そんなわけで。(あくまで私にとってはですが)つんく♂さんが書く「青春」「人生」「地球」まみれの歌詞がなんでアラサーの胸に届くのか考えてみました。
ちょっとだけ「青春」「人生」「地球」にたどり着く前に寄り道もしてみます。
※「つんく♂さんがどんな想いで書いていらっしゃるか」というよりも、「私がどう受け止めたか」のお話だとご理解いただけますと幸いです。
※引用する曲が多いので脚注をご参照ください。
都合よくトリミングされていない「女の子」
つんく♂さん、本当いつも「この人日本中の女子会に飛び込み参加したり、JKのプロフィールで裏アカ作ってInstagramとTikTokしたりしてんじゃね?」ってくらい女の子のことよくわかっているんですよね。
話逸れるけどつんく♂さんがTikTokしたら16ビート極めすぎてレベル違う動画になりそう。
この人、エスパーだなってしみじみ思う歌詞をいくつか。
凍てつく乙女心は
今日もネットで買い物をした
試合の予定ない勝負服
さらに凍りつく 明細書が来る*1
普通は、明細書のことまで書かなくて良いんですよ。可愛い可愛いアイドルなんだから。
でもやっぱり、ストレスのはけ口にネットで買い物しちゃったうえに多額の支払いを背負ったあの惨めさまでを含めないと「凍てつく乙女心」じゃないんです。クローゼットに眠る不戦敗のお洋服に諭吉を差し出す虚しさったら。
ハンバーガーかじりながら 街行く人を眺めてた
本当に笑っている子なんているのかな*2
なんてこった。カフェテラス流れるmusicぼんやり聴いていたらカモンカモンカモンカモンベイビーしちゃう可愛い某48さんとは違いすぎる現実っぽさ。
笑って歩く子を羨ましいと嫉妬するだけにとどまらず、「あの子だって心から笑っているのかわかんないじゃん」と言わんばかりに疑いにかかる自信喪失と傍若無人のコラボ。
そんでもってハンバーガー。肉上等、油上等。
なんかお洒落じゃないんです。
「何度か歩いた商店街」*3とか、「デリバリピザ いつも悩む LかMか」*4とか。
なんか辛気臭くて孤独なんです。
「みんなロンリーBOYS&GIRLS」*5とか「マンガを読んでごまかすのよ」*6とか。
でも、「綺麗」「可愛い」「素敵」「キラキラ」じゃない部分もちゃんと描いてくれるから、みっともないところもトリミング編集で消されないから、言葉が全部モノホンのものとして心に届く。枯れアラサーにも縁遠くない心当たりある「女の子」。
ちなみに、ハンバーガーの続きはこう。
ヘッドフォンから流れてる お気にの曲が繰り返し
この歌詞は私のこと歌ってる
超めんどくさい心の解読
感情って一色じゃないんですよね。つい忘れちゃうけど。
言葉にしたら「アンビバレント」、「ジレンマ」、「ジェラシー」ってところでしょうか。
ちなみに、「アンビバレント」は1つの対象に抱く相反する感情、「ジレンマ」は板挟みらしいです。雰囲気で現代文解いちゃう私のお勉強になりました。
私世代なら「サマーナイトタウン」*7の「大キライ大キライ 大キライ大スキ」が語尾の吐息まで脳内再生できるでしょう。
なお、現代版では'19が「I surrender 愛されど愛」*8で「最低 最悪 but 好き」と同じ気持ちをアップデートしてくれています。
要するにめんどくさい。ツンデレだねって言って受け止めてくれる人ならいいけど、普通は「お前重くて無理だわ」って言われそう。
また、曲をまたいで歌詞を読んでみると「大人になれば大人になれる」*9って言ったかと思えば「乙女はいつでもよしよししてほしい」*10なんて言ったりもしている。うーん、一筋縄ではいかない!超めんどくさい。でも、どっちも本当だから自分でも超めんどくさい。
なお、こういう感情のときは「言わないでも私のことわかってよ!」とか喧嘩しがち。難問。
去年のROCK IN JAPANで披露された現役ちゃんの勝負曲の1つ、まさにその名も「ジェラシージェラシー」には、こんなフレーズもあります。
「すごいね」なんて
そんなすぐ認めてやんない
(中略)
若いだけで羨ましいのに
難しいことサクサク出来ちゃうって
わっかっる。なんならこれ毎日思ってる。
あれ?いつから心の声って音声入力できるようになったっけ?
すっごいどうでもいい話に脱線するんだけど、同じ職場に超可愛いほんわか系同僚がいて「愛されて育ったらあの子みたいになるんだね」って言われていたのね。
それ聞いて、「じゃあ私はズタズタに傷ついて育ったからこんなんなんですね」とか自虐しちゃったんだけど、そのほんわか同僚と私の格差にも、要らないこと言ってくだらない笑い取っちゃう性格もほんと辛い。生きるのがヘツァ。
見せたくないけど見てほしい本音の部分をごそっと描き出す脅威の表現。
こんな歌詞のオンパレードを読んでは、ひねくれアラサーも「あれ、つんく♂って私だっけ」と勘違いし始めるのです。
つんく♂レンズから覗く「地球」と「青春」
いや、違う。つんく♂さんは私ではない。
地球のことも私たちのことも大事にしてくれる、いわば人類の父なんです。
ここからがこの記事の心臓。
たとえば、反体制っぽい歌詞だったり、扇動的な歌詞だったり、そういうガチで地球や日本のことを大事にしてくれるロックな歌詞はいっぱいあるんです。
けど、なんか日常の自分と乖離している。そんなときもあったりする。
凄いと思う、行動的だと思う、大事だと思う。けど、うーん、みたいな。
行かなきゃいけないんだけどアレコレしてたら選挙行くの忘れちゃったや、みたいな。
でも、つんく♂さんの歌詞は「地球のこと大事にしよう」って気持ちを自然に与えてくれるんです。
やっぱりあなたがくださる元気
やっぱり誰もが求める元気
地球に流れる素敵な空気
ぐっすり眠れる平和が好き*11
これ読んで地球大事しよう、平和な世の中が良いって思わない人なんているの?
地球のこと、日本のこと、あなたと過ごす空気のこと。
規模の大きさで境目を作らない。全部同じ空間のこと。
恋愛のことだったり、自分のことだったりを歌っているときも、地球のことは切り離さない。
見ている範囲が、「でっかい宇宙」*12みたいにマクロだったり「この胸の中の空間ほとんど」*13みたいにミクロだったりする違いはあれど、大事なことはいつも一緒。顕微鏡の倍率を変えているだけで、核になるものは変わらない。
私がいる、あなたがいる、家族がいる、みんなも社長さんもwow wow yeah yeah*14できる地球。
この顕微鏡理論、実は「青春」と「人生」でも通用する気がするんです。
「青春」の一般的なイメージは、光を放つ不可逆な時間、汚されない時代。
けれど、つんく♂さんの書く「青春」は枯れアラサーにもちゃんと実像として見えて、触れることができる気がするんです。
青春Night
幸せってまっすぐ選ぶだけ
青春Night
幸せをチョイスできない
私はこっから脱出 Get away
(中略)
私の人生 エンジョイ!!*15
「青春」の青い、若いイメージからは想像つかない「幸せをチョイスできない」というフレーズ。
この曲では「若いから青春」「未熟だから青春」という描き方はされていないんです。ちゃんと幸せにたどり着きたい、大人にも存在する感情。
そんでもって「人生」が出てくる「青春」の1ページ。
「青春」が刹那ではなく「人生」につながるものになっている。
そんでもって、同時リリースの「人生Blues」*16はこう言っている。
人生って
ここぞっていう日があるんだね
前もってわかりゃいいんだけど
これ、「ここぞっていう日」が「青春」って考えても面白いですよね。
つまり、つんく♂さんの歌詞に出てくる「青春」は「人生の鍵になる一場面」っぽい意味でも読める。切り離されていない「青春」と「人生」。
「歴史刻んだ地球」*17も、「美人ぞろいのジャパニーズ」*18も「世間を知らず街を飛び出しここで暮らす」*19のも、私が立っているところから地続き。
「この手が挑む元気な未来」*20も「ひとりぼっちで少し退屈な夜」*21も、私の人生の一場面。
「地球」にも「僕らの先」にも「未知なる部分」*22があると重ねてくれる。隔離しない。
ナマで複雑な乙女心で、地球と人生と青春を大事にしたくなる歌詞を作ってくださるつんく♂さん。
なんかこんな歌詞を読んでいると、ひねくれアラサーでも人生ちょっと頑張ってみようかなってなりません?
ちなみに、私が冒頭に挙げた曲に、既にこの答えが凝縮していました。
明日がある限り
青春時代なんだよ!*23
周りがミニモニ。とタンポポ派閥だらけだったのに、プッチモニのこの曲がめちゃくちゃ好きだと心酔した子どもの頃の私に教えてあげたい。
そのまま大きくなれよって。だいぶ生きるのがヘツァだけど。
つんく♂の曲で幸せになりたい!
モーニング娘。を改めて聞くようになる少し前、マツコ・デラックスさんがエッセイでモーニング娘。のことについて書いていらっしゃるのを拝読しました。
そのときは、なんでこんなにつんく♂さんの書く歌詞について熱いんだ、くらいで思考が止まっていました。
その後、私もつんく♂さんの書くモーニング娘。の曲を聞くようになりました。
そして、マツコ・デラックスさんとつんく♂さんが対談するとある番組を見ました。
対談中、マツコ・デラックスさんは「(つんく♂さんの歌が好きな人って)圧倒的に幸せじゃない人が多いと思う」とばっさり言いました。ご本人の前で。
今ならわかる気がします。でも、ちょっと付け加えとく。
つんく♂さんの書く曲を聴く人って、もしかして「幸せじゃない人」というよりも、「幸せになりたいんだけど、自信がない人」なのかも。私もそうだけど。
私、ダメなところいっぱいあるもん。
眠いときは眠いし、おなか減ったら何か食べちゃうもん。
恋愛一筋ならかっこいいけど、家族も好きだし。
地球も日本も好きだけど、政治っぽいことは詳しくないし。
そんな人に、届く言葉。寂しさや平凡な自分への悩みを無視しない言葉。
晴れの日があるから
そのうち雨も降る
全ていつか納得できるさ
人生ってすばらしい*24
ひねくれアラサー、この沼は抜け出せそうにありません。
「かつて『オールナイトフジ』(フジテレビ系)に出ていた女子大生みたいに、古臭い顔をしている」ってマツコさんに言われていた少女が私の推しになったのは笑う。
この記事読んで、私の謎の後ろめたい価値観にシンパシー感じたならこちらの沼も是非どうぞ。
*1:「気まぐれプリンセス」。亀井絵里の破壊的可愛さが世界を救う1曲。
*2:「なんちゃって恋愛」。高橋田中はこの年齢不相応な湿っぽさを出す職人。
*3:「Do it!Now」。宇宙のどこにも見当たらないキスがどうして原宿にあるのかずっと謎。
*4:「ザ☆ピ~ス!」。ハロヲタ選挙のたびにこの曲聴きすぎ問題。
*5:「ここにいるぜぇ!」。馬鹿みたいにいつまでもかっこいい。
*6:「One・Two・Three」。今の娘。の起爆剤。
*7:私的に初期は守りたくなる安倍と不機嫌そうな福田の対比が肝。
*8:羽賀脱皮のための曲。
*9:タイトル同じ。佐藤生田石田の歌割が本人そのまますぎて狂おしく好き。
*10:「One・Two・Three」。道重さんは加工されるために声帯を持った。
*11:「元気+」。美貴帝が「ぐっすり眠れる」って歌うミスマッチ感大好き。
*12:「でっかい宇宙に愛がある」
*13:「恋してみたくて」
*14:脚注いる?「LOVEマシーン」。DNAをゆさぶる怪物曲。
*15:「青春night」。森戸佐藤を先陣に置き、譜久村野中小田がどっしり構える19最高の布陣。
*16:MVはどうしてああなってしまったのか
*17:「恋愛レボリューション21」。世代だからupdateがまだ馴染まない。
*18:「HOW DO YOU LIKE JAPAN?~日本はどんな感じでっか?~」。新垣原曲も現役石田も味があって選べない。
*19:「愛の軍団」。鞘師の帽子姿が可愛すぎて悶える。
*20:「この地球の平和を本気で願っているんだよ!」。高橋はこのときの尖ったビジュアルがお気に入り。
*22:「THE マンパワー!!!」。意味わかんない部分があるのは否めないけど17のまーさくが強すぎてもう何でもいい。